何故、小児科クリニックを作ろうと思ったのか その1「安心して話を聞かせてもらえる空間の大切さ」

今日は、小児科クリニックの開業を決意したきっかけについて書いてみます。

ですが、いきなり謝っちゃいますけれども「開業しよう」といつ思ったかとか、どうして思ったかというのは、はっきりとは言えません。

なので、今日この投稿だけではなくて、これからも色々な機会に「何故開業しようと思ったか」という話をあれこれ書いていくと思います。

そういう、たくさんの小さなきっかけや思いが地層のように積み重なっていって、出てきた模様が「開業」だったということかもしれません。

今日は「北海道子どもの虐待防止協会」総会と講演会の日で、「子どもの声に耳を傾けて-アドボカシーの心と実践-」という講演を聴くことが出来ました。

アドボカシーという言葉は聞き慣れないかもしれませんが、何かの意見表明や活動を支えるというような意味で、日本では特別に弱い立場の人の権利を守る活動というような意味で使われています。そのためには、他の誰もいないところで安心して話をしてもらうということが、絶対に必要になります。

この部分が、これまで私のやろうとしてきたこと、そしてこれからもっと力を入れていきたいと考えていることの中で、とても大切なのです。

これまで私が医者として働いてきたのは、総合病院の小児科です。

総合病院の小児科は、どうしても急性の病気中心に診療をする場所になります。そこは、すぐに命にかかわるような病気を扱う最後の砦になる場所なのです。ですから総合病院というところの建物は、スタッフが動きやすいように、情報がいきわたりやすいようにという配慮から、とても風通しが良い設計です。

それはとても素晴らしいことなのですが、一つだけ問題があります。

そういう場所では内緒のお話はしづらいのです。

内緒話が出来る場所は大事!

扉の閉まるお部屋もありますが、重い感染症の方が来たときの隔離室にも使いますから、なかなか長時間そこを占領することはできません。

夕方の遅い時間になると、急性期の患者さんの診療はあらかた終わっていますから、静かで患者さんの秘密を守ることが出来る空間を作りやすくはなりますが、その時間ならばいつでも大丈夫というわけでもありません。

それに、聞かせていただくお話の内容によっては、体の安全を調べたり、患者さん(つまり子ども)を危険から守るための対策を急いで考える必要があったりもします。ですが、夕方遅くという時間帯では公的機関も閉まっていたりするので、できることが限られてしまうのです。

また、遅い時間帯はほかのスタッフもいませんので、ほとんどのことを私一人でこなさなければなりません。それでは非常に慌ただしくなってしまいますし、時には危険も伴います。

これが、小児科医の私にとっての長年の悩みでした。

私が開業を決意した理由の一つが、受診に来た子どもたちが安心して秘密の話をしていけるような部屋が欲しい、ということだったんです。

今、建設が始まっている「心と体の小児科 ふじねクリニック」の建物の中には、内緒のお話もできるようなお部屋が出来る予定です。完璧な防音が施してあるというわけではありませんが、設計をお願いした波多野・高山設計事務所さんと相談して、たくさん人のいる場所から離れたところで話を聞かせてもらえるように、診察室のほかに3通りの面談場所を設定することができるような図面になっています。

それがどんな風になっているのかは、また改めて記事にしたいと思います。お楽しみに。

(まだグーグル・マップには反映されていませんね。でも、もう工事は始まっています!)

「心と体の小児科 ふじねクリニック」では、とにかく誰かがきちんと子どものお話を聞くこと、その意見をしっかり受け止めながら次を考えていくこと、ということを大事にできたらと思っています。

もちろん、保護者や周囲の大人、ご兄弟のお話を聞かない、というわけではありません。日本小児科学会では、「小児科医は子どもの気持ちの代弁者」ですよと言っていますが、家族の支援者でもあるべきだと私は考えています。

子ども自身の話と周囲の人たちの話の間で、どんなバランスを取ったらいいか悩むこともたくさんありますが、そこも含めてこれから皆さんと一緒に考えていけたら良いなと思っています。