声優 田中敦子さんを偲んで

8月20日に声優の田中敦子さんが亡くなりました。

何故ここで声優さんの記事なのか、というと、クリニックを作るときのイメージの中に『攻殻機動隊』というアニメが入っていたからです。

『攻殻機動隊』は志郎正宗さんの漫画を原作として作られたアニメで、映画版もテレビアニメ版もあり、数シリーズあります。そのアニメの主人公である「草薙素子」の声を当てていたのが声優の田中敦子さんでした。

草薙素子というキャラクターは、全身サイボーグで脳だけが生身という女性で非常に強く、『公安9課』という少数精鋭の機関のリーダーとして活躍します。かつて軍隊にいたこともあるため「少佐」という通り名で呼ばれています。公安9課は複雑で荒っぽい、情報戦(電脳戦)も銃撃戦も同時に処理が必要となるような案件を処理する機関です。荒巻大輔という課長以下、実働メンバーのリーダーを草薙素子が担っています。メンバーがそれぞれ特殊能力を持っており、誰かの命令で動くというよりも、各自が主体的に動きながら「草薙素子=少佐」のリーダーシップのもとにその能力を発揮して案件を処理していくチームです。荒巻大輔課長の有名なセリフに

「我々の間には、チームプレーなどという都合のよい言い訳は存在せん。有るとすればスタンドプレーから生じる、チームワークだけだ。」

があります。人を集めてから一緒に何かをやろうね、仲良くやろうね、というような目標のぼんやりした感情的なノリでは責任転嫁やあいまいな行動、離脱などにつながりやすいものです。でも、各自が持っている能力を自由に発揮して一つの目標に向かって主体的に行動するチームは、誰かに依存するのでもなく、上下関係もなく、お互いを尊重して信頼していくことができる。それが公安9課の在り方であるということです。

クリニックも、それぞれのスタッフが各々持っている能力を生かしながら一つの目標に向かって活動していくことができたらいいなあ、と思って、ブランディングの時に『攻殻機動隊』のイメージを入れたのでした。でも、私自身は少佐のように力もないしかっこよくもないのですけれどね。

田中敦子さんは本当にたくさんのアニメや映画で、たくさんのキャラクターの声を当て、海外の女優さんの吹き替えをしていました。戦う女性を演じることが多かったその声は、いつも力強く凛々しく、時にやさしく、かわいく、聞けばすぐそれとわかる素敵な声でした。人となりも凛としてそれでいてチャーミングだったそうです。もう新しいセリフを聞くことができないなんて、残念でなりません。

インタビュー動画を見ると、草薙素子役になれたことを大変喜び、役が降りてくるという気持ちで演じていたと話しておられました。そんな風に田中敦子さんがゴースト(魂)を込めて演じてくださり、作り上げてくれた少佐のイメージは、いつでも自分を勇気づけてくれます。これからも、いつまでも大事にしたいと思います。